20世紀クロスワード 解説裏話

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世代の違いを実感、自分の体験や記憶を思い出して

解説で入りきらなかった話を、カギに組み込んでもらったケースも少なくありませんでした。本末転倒な話で申し訳なく思っています。

なかでも申し訳なかったのは「ハレンチ」(ヨコ922)の件です。裏話の座談会でもふれられていますが、永井豪の「ハレンチ学園」をカギに入れてもらったのですが、そのために、作者の意図を損ねてしまいました。ほかのカギをけずってでも、両論並記にしなくてはいけないところでしたね。

しかしながら、「羽目の外し方がむしろカッコいいという意味で流行した言葉だった」というだけでは、当時の若者以外には(当時の大人にも子供にも)難しすぎると思いました。私はニコゴリ氏より数年年下なんですが、そのあたりの世代の差が大きいようですね。1970年ごろの若者たちの空気というのは、私も少し嗅いだだけでしたが、今の若い人たちには理解できないものがあると思います。

ニコゴリ氏が創られた部分は、ずいぶんコダワリがあるようで、解説をつけるのに苦労をしました。いただいた資料をほとんどそのまま写したものもあることを白状しておきます。

それとは逆に、今回解説を書かせていただいて、子供のときのできごとをずいぶん細かいところまで覚えているものだと、我ながら感じました。特に、東京オリンピック(ヨコ841)や大阪万博(ヨコ1019)の話や月(ヨコ1006)着陸のことは昨日のことのように思い出せました。

たとえば、オリンピックについて、北朝鮮とインドネシアの突然の不参加は印象に残っています。「新興国スポーツ大会に参加したという理由で参加を拒否された」と書きましたが、厳密にいうと「新興国スポーツ大会に出た選手の参加を認めない」とするIOCに対し、それなら「参加をしない」といって両国が選手団を引き揚げたというのが事実のようです。しかし、実質的にはIOCが参加を拒否したといっても変わりないと思います。自分たちが正しいとするIOCの体質が垣間見られた一件ですが、子供のときの私は、北朝鮮の選手と韓国に住む家族との対面が一瞬に終わったといったニュースのせいもあって、ひたすら悲劇だと思ったわけです。

それにしても、敗戦からオリンピックまでが20年足らず、万博まででも25年しかないのに、それから現在まで30年以上になるというのは、私も驚きでした。

記憶だけではまずいと思って色々調べてみてもなかなか確定できないことが多々ありました。そんなときは、インターネットで検索してみました。インターネットの情報というのは書き手の記憶によるものも少なくないので、全面的に信用するわけにはいかないと思いますが、自分の記憶の確認には有効だと思います。みんなで記憶違いをしていることもあるかもしれませんが。

最近の部分については、分量の配分に慣れたことと、締め切りが迫っていた(というより過ぎていた)ために、あっさりしたものになっていると思います。それに、歴史的評価が定まっていないのでうっかりしたことは言えないと思っていましたから。消費税(ヨコ1479)について、「消費税そのものは脱税しにくいことから公平性が高いし、徴税コストも低いので、基本的には悪い税金ではない」と書いたら、校正が終わってすぐに消費税脱税のニュースがあって困りました。政府の施策の悪口ばかり言うのも問題かと思って書いたのがアダになった感じです。

また、ハイセイコー(ヨコ1094)やピンクレディー(ヨコ1205)、おしん(ヨコ1325)などは、体験に基づいて書いたものです。また、イチロー(ヨコ1550)の解説で「大リーグでの活躍が待たれる」と書いたのは、ちょっと自慢したいところです。

それにしても、2000年の後半には、ずいぶんと重大な事件がありましたね。ブッチホン(ヨコ1656)のところで「後継の森首相のせいで人気は高いが」と書きましたが、その後の森首相の「活躍」は、想像を上回る「困った」ものですね。

一番最後の解説(タテ1665本土)は、21世紀につながるものにしたいと思っていました。「多様性」というのがキーワードになるとのは間違いないでしょう。本当は、余裕があったらヨコ1の解説で「20世紀がどういうイメージで迎えられたか」について書きたいと思っていたのですが、締め切りとスペースの関係で断念しました。21世紀になるときの不安感・焦燥感と比べて、ずっと希望に満ちていた時代だとは言えるでしょう。