狭くて広い国ニッポン

by 滝澤兼二

「狭い日本、そんなに急いでどこへ行く」

この交通標語が生まれたのは1973年。その年の全国交通安全運動の標語募集で総理大臣賞を受けた由緒正しい標語です。

確かに、日本に住む者の実感として、この国を狭く感じている人は多いことでしょう。世界地図を広げれば、ロシア、中国、アメリカ、カナダ…日本よりはるかに大きな国が、嫌でも目に入ります。

では、本当に日本は小さな国なのか、いくつかの数字で確かめてみましょう。

日本の面積は、約37.8万平方キロメートル。地球上の全陸地は、約1億4889万平方キロメートルですから、世界地図で日本列島が占める割合はわずか0.254%に過ぎません。しかし、現在、200余りある世界の国々を面積順に並べると、日本は半分より上のおよそ80番目に位置します。面積ランキングでは、日本は中の上クラスの国なのです。ちなみに、ヨーロッパには39の国がありますが、そのうち日本より広い国はたったの3つしかありません(どこかわかりますか? 答えは文末に)。

そして、実面積以上に広大さを誇るのが、経緯度の広がりです。

北端は、北方領土と呼ばれる択捉島の北緯45度33分19秒。

南端は東京都の沖ノ鳥島、北緯20度25分14秒。

東端も同じく東京都にある南鳥島、東経153度59分12秒。

西端は沖縄県与那国島、東経122度55分59秒。

すなわち、日本列島の緯度差は25度8分5秒。緯度1度当たりの距離は中緯度では約110.9キロメートルなので、南北差は2787.4キロメートルになります。

また、経度差は31度3分13秒。原理的には経度15度で1時間の時差が生まれますから、その計算では2時間4分13秒の差があることになります(実際は日本国内に時差はありませんが)。

日本の多彩さは、その地形にも表れます。日本は細長い島国であり、かつ、列島中央を急峻な山脈が縦断しています。国土面積のうち、山地が占める割合は、実に75%に及びます。日本とほぼ同程度の面積を持つイギリスやドイツがはるかに多くの平野を持つのとは非常に対照的です。少ない平野に人口が集中していることが、日本で暮らす人々が、実面積以上に、この国を狭く感じる理由の一つでしょう。

そんな狭いようでいて、実は広くて多彩な日本列島をクロスワードに仕立てる今回の企画。今後とも引き続き、おつき合いください。皆さんの身近な情報、質問ページでお待ちしています(クイズの答え:フランス、スペイン、スウェーデン)。

2002年1月11日