もう一発、致命的な材料があった。

「次はいつ出るの?」と言われたときだ。

「一応3カ月後なんですけど、一応不定期なんです」(まずいなあ、と思う)

「そりゃあ、まずいよ。お客さんに次いつ出るの、と聞かれて、わかりませんじゃ納得しないぜ、相手は。それに精算はどうすんのさ。突然持ってこられて、前の号の精算してくださいったって金ないぞ。1年後に来られた日にゃあ、あんたの顔も覚えてないよ。ましてやだねえ。本は半年も1年もほったらかしておけないの。新しいのが出ても出なくても、毎月1回、見に来るってんならおいてもいいけどさあ」

「はあ」と言うだけである。丸くなっているだけである。

無知だったから、1軒1軒の店の言い分をもっともだと思い、頭にきても、非は自分にあるのかな、と最後はしょげた。

10件回って、やっと1軒が10部とか20部おいてくれたような的中率(?)であった。

だがだが。

転がってしまったから仕方がない。売りに行かねば。

渋谷の東急ハンズはこのとき、オープンして2年経っていただろうか。ぶらりと買い物に出かけたついでに、7階のホビー書籍売り場をのぞいてみた。

ま、いいや、当たって砕けろだ。

売り場の責任者の人は、じっくり創刊号を手にとり、

「どうかなあ。ボクは面白いと思うけどね。ちょっと待っててね」

そう言われるだけでうれしい私であった。普段は門前払いだ。そしてこのあとも私は期待していない。ドンデン返しがあたり前だから。

向こうで本を並べていたおじさんを連れてきて、この人が社長だった。

ニコリを見るなり「いいよ。持ってこいや」「は? はい」「100冊」「えっひゃく?」「ないの?」「いや、あります」「じゃ、すぐ持ってきて」「あ、あのお」「今持ってないのか。じゃ、明日でいいや」

世の中にこういう人もいるのか、と思った。ニコリの中身も見ていないのだよ。