まあしかしこの年はパズルを解きまくっていた。ゲームを遊びまくっていた。デュードニーの本、ロイドの本、ガードナーの本、藤村幸三郎の本といった世界的に有名なパズルの本を読みまくった。

パズルの師匠Mさんの紹介で「パズル懇話会」にも顔を出したが、数理パズルをとことん遊びまくる世界で私にはついていけず、樹村を会員にした。いやあ、こんな世界もあるんだ。毎月1回集まる平均50才(? 失礼)くらいのメンバーの中に、芦ケ原伸之、高木茂男といったビッグネームもいた。芦ケ原伸之、ノブさんはこの世界で五指に入る人で、コレクター(収集家)、メイカー(創作家)、ソルバー(解読者)のいずれもトップクラスに位置していた。

「ニコリのような異端児にパズルを語ってもらっては困る。おまえたちのやっているのはリトゥンパズル。まあ、ペンシルパズルだな。その他にメカニカルパズルというのがあるのだ。知恵の輪しかり、ルービックキューブしかり。パズルというのはだな」といつもノブさんに説教された。樹村はかわいがられた。

私は私でペンシルパズルとやらを普及させるためにやっているのだ。閉じこもって研究熱心、挑戦意欲に訴えるのではなく、電車の中、待ち合わせの間に気楽に遊べるパズルが好きなのだ、それを広めたいのだ、と思っていた。だからノブさんにやりこめられても気にならなかった。

ノブさんは著作物が何十冊もある人だから勉強になった。パズル界の面白みがわかり、その中でのニコリの位置がわかった。

雑誌という舞台にパズルが上がったとき、目指すのはエンターテインメントだ。なるべくたくさんの普通の人がパズルを単純に面白がってくれればいい。私はパズル界から見れば普通の人だから私自身が楽しめるパズルをとことん発信していくのだ。ノブさんの方向はノブさんにまかせた、ニコリはニコリの方向でいくぞ、てなカンジで少し気張った。