直(直接委託取り引き)だったので、1軒1軒を回って納品、返品、請求、集金業務をしていた。

その他に「地方・小出版流通センター」というところと契約をしていた。3万円で口座を開き、そうするとニコリをおいてない書店でも注文してくれれば全国のどの店でも手に入る、という仕組みである。

ここの社長の川上さんは「世の中にない本好き」で、口うるさいがニコリを応援してくれた。良い書店と悪い書店があって、良い書店だけにおきなさいと言う。

そんなこと言われてもなあ。

通勤途中の駅前の本屋さんの方が疲れない(私が)し、交通費もかからない(私が)しなあ。

店が明るいとか品揃えがいいとか、外見で判断しちゃうよなあ。

良い書店の意味が分かるのはずっとあとになってからのことだった。

この年(1982年)に萩島出版から「ザ・パズル」という、単行本のような雑誌のようなパズル本が創刊された。

ある日、電話がかかってきて萩島出版の編集人が会いたいというので、会った。

「私たちは6カ月間マーケティングをした結果、パズルの雑誌が日本にない、ということがわかって、それなら出してみようじゃないか、とつくったんですよ。そしたらニコリという雑誌があったんですね。びっくりしました」と言う。

私はいろんなパズルを展開しているあちらの誌面を見て、ニコリを意識して創刊したと思っていたから、その話を聞いてこっちもびっくりした。

ま、お互いがんばりましょう、と別れた。

まだこの時点で私は先のことを何も考えていなかった。

とにかく本作りは面白かった。樹村はうんざりするほどパズルを載せることで、清水は思いきり自由にイラスト、キャラクターを描けることで、私は勝手気ままに振る舞えるメディアができたことで、各々の立場をはっきりさせながら思い入れを誌面に生かすことができて満たされていた。