B書店のKさんのところに何回目だったかの集金におじゃましたときは驚いた。ニコリがエロ本のコーナーにおいてあるのだ。

「もうちょっと売れると思ったのでこっちにしたんです。ここは夜に伸びるんですよ。ここの方が売れますよ」と言われたが、「SMスナイパー」のトナリに平積みしてあるニコリを手にとってみると暗闇のホタルのような、誌面の純粋さにあきれてすぐ元に戻してしまった。その後、実際に売れ行きは伸び、補充でおじゃまする回数が増え、本屋さんってわからないなあ、と思った。

吉祥寺のパルコブックセンターも創刊号からのおつきあいだ。いつもの趣味実用書のコーナーからある日突然、陽のあたる雑誌コーナーに移してくれたら毎週補充となった。こんなにうれしいことはない。「ついに3000部突破!」というポップが知らぬ間に貼ってあったときは誰よりも私がたまげた。一ケタ多いよお。その1カ月後には「堂々5000部突破!」で、おいおい、である。

この時点で出張馬房は50そこそこだ。

北海道は札幌にしか馬房がない頃、帯広市高橋書店(ザ・本屋さん)がニコリの客注を1冊受け、電話が直接かかってきた。私は単純に部数が伸びれば、と新刊5冊を書籍小包で送った。直委託の取り引き開始である。しかし商売になっていない。このままずっと5冊なら赤字だな、でもいいやな、とそのときは思っていた。

ところがである。火がついたのである。担当のTさんと1人の読者(女子高生と聞いた)が火をつけてくれたのだ。追加注文の連続、クチコミだけで2カ月間に250冊売れて、十勝毎日新聞にも載ってしまった。「パズル専門誌引っ張りだこ」「全国的に人気」の大見出しで取り上げてくれた。パズル専門誌ってニコリしかないのである。全国的に人気って、全国の50店にしかおいてないのである。

このあとに方丈社から「クロスワードマガジン」が創刊された。