12月10日(日)

 朝から横浜で仕事。
 帰りに、つい先日まで住んでいた街に足を伸ばし、毎日通っていた飲み屋を訪問。いきなり馴染みの従業員に「太りましたね」と言われ、ややショック。まあ確かにここのところ運動不足である。自制せねば。
 とかいいつつもいつものペースで飲み続けていると、突然隣りから声がかかる。見ると女王様であった。ここの常連客の一人である。ええとそのような呼称ではありますが別に怪しい関係であるというわけではなく単なるニックネームのようなものなのであまり深い詮索はせぬように。
 本来はこちらから挨拶をしておかなければならない相手である。
 とりあえず床に頭をすり付けるように返礼。こういうときには普段はもっとねちねち攻められるのだが(くどいようですが変な関係では断じてない)、今日は妙によそよそしい。
 当時はもっと傍若無人の振舞いでコアなファンさえ引いているような人だったのである。しかしどうして飲み屋の常連には必ずこういう独身女性が一人いるのだろう。それはともかく。

 ぎこちないまでに猫を被っているので違和感を感じていると、案の定トイレから男が戻ってきた。若い、昔の江口洋介のようなさらさらヘアーの男である。彼女には少々不似合いなくらい、誠実そうな顔の男であった。ふうんそういうことか。結構純情なところもあるのだねえ。

 男と言葉を交わしてみたかったが、口を滑らせるな、という鋭い眼光を女王様からキャッチしたので、そそくさと店を出て、別の飲み屋に。ごちそうさま。

 しばらくして店に戻ってみると、彼女も男も姿を消していた。彼女の真実の姿であるあんなことやこんなことが、少なくとも今夜だけは彼の耳に入らないことを祈り、再び飲み始める。

 BGMは「星に願いを」で。