11月22日(水)

 想像してください。

 冬の砂浜、うすぐもりのぱっとしない空、空気もどこかどよついている。陸から海に吹く冷たい風が耳にしみる。周囲に人影はない。
 はるかに広がる浜には、流れ着いた大小のゴミや、夏の夜の喧騒の名残り、うーんとそうですね、花火の筒の残骸とか、キャンプファイヤの跡とか、そういったものが哀しい感じに点々としている。そんな風景。

 そんな中あなたは一人でゴミ拾い。遠くに見える灯台のところまで、ゴミを一つ残らず拾っていかなければならない。

 まあよほどの人でなければ、ちょっと気が遠くなる作業だ。僕もそう思う。誰かがやらないといけないけれど、できれば避けて通りたい、そんな作業。

 「第1チェック」というのを言葉で表そうとすれば、だいたい、そんな「冬の砂浜のゴミ拾い」に似ている。

 この時点でできあがってきた原稿は、言ってみれば大小様々な欠陥の詰め合わせ状態である。解けない部分、解けるけれど解き味の悪い部分、別解がある部分、極端に難解な部分…他の人はどうか知らないけれども、この段階でのパズル作品というのは、僕の場合まだまだ人に見せられる状態にはなっていない。くどいようだが注意力が極端に欠落した人間なのである。

 第1チェックは、とりあえずそのような欠陥をちまちまと修正していく、気が遠くなるような作業である。しかもその過程においてもミスは発生する。困ったもんだ。

 鉛筆が止まったら、原因は
1)解き筋の見落とし
2)チェックの段階での解き間違い
3)トレースの段階での写し落とし・写し間違い
4)数字入れの段階でのうっかりミス
 の4パターンが考えられるわけだ。第1稿と見比べながら、どの種類のミスなのか見当をつけ、4)の場合は、盤面を解けるように補正する。また、途中、あまりにも気づきにくい難解な手筋などがあれば、解き味を落とすもとなのでどんどん修正していく。作っているときは局所的にしか数字を見ていないので、案外難しい手筋が入ってしまうものである。

 チェックをはじめてはや三日目を迎えようとしている。もうすでに50箇所近い部分修正、2箇所の大規模修正を行うが依然として解き終えることはない。

 どうなってしまうのであろうか。

 目印の灯台ははるか彼方にあって遠い。